有限会社イオキテック

コラム

イオキテックが語る

精密加工の真髄

2026.09.26

オーダーメイド・自動化
             

食品機械の搬送改善は小さな違和感から考える

「容器がもう少し手前まで来れば、腰を伸ばさずに取れるんですが」

食品工場で搬送設備の相談を受けると、話はこんな小さな違和感から始まることが少なくありません。機械が止まっているわけではありません。製品も流れています。それでも作業者は一日に何度も手を伸ばし、容器の向きを直し、ときにはコンベヤの脇へ落ちそうな製品を手で戻しています。

こうした現場では、既製品を探しても、ちょうどよい答えが見つからないことがあります。だからといって、すぐに新しい機械を一から作るとは限りません。今の設備に手を入れる方法もあれば、一部だけ入れ替える方法、いずれ自動化まで見据える方法もあります。

先に考えたいのは「作れるかどうか」ではなく、「本当に手を入れるべきかどうか」です。要望がまだ固まっていなくても、実機を見ながら話していくうちに、何に困っているのかが少しずつ見えてくるものです。

搬送設備の相談は小さなやりにくさから始まる

ある食品工場では、包装後のトレーを検品台まで運ぶベルトコンベヤについて相談を受けました。担当者の最初の言葉は、「大きな故障ではないんですけど、夕方になると流れが悪くなるんです」でした。

製品が増える夕方だけ、コンベヤの出口にトレーが重なります。検品する人は、表示を確認しながらトレーを箱へ移さなければなりません。ところが次のトレーがすぐ後ろまで来るため、確認を急いだり、片手で後続品を押し戻したりしていました。

設備担当者から見れば、コンベヤは正常に動いています。製造責任者から見れば、処理能力を落とすわけにはいきません。作業者から見れば、「数秒だけ待ってくれれば楽なのに」という状態です。同じ設備を見ていても、困り方は立場によって違ってきます。

最初はコンベヤを延長したいという話でした。しかし現場で流れを見ていると、必要だったのは距離を伸ばすことだけではありませんでした。検品中のトレーを一時的に止め、確認が終わったら次を送る。その短い間をどうつくるかが、相談の中心になっていきました。

わずかな寸法差が作業者の動きまで変えてしまう

搬送機械では、数十ミリの違いが思った以上に現場へ響きます。コンベヤの高さが作業台より少し高ければ、作業者はトレーを持ち上げて移します。反対に低ければ、手首を返しながら引き上げる動きになります。

先ほどの現場でも、既製のコンベヤをそのまま延長すると、検品台との間にわずかな段差が残ることが分かりました。空のトレーなら問題にならない段差でも、中身が柔らかい製品では乗り移る際の振動で位置がずれます。フィルム包装前であれば、製品の形が崩れることもあります。

「このくらいなら板を一枚渡せばよいのでは」という案も出ました。実際、短期間ならそれで流せる場合もあります。ただ、清掃のたびに板を外すのか、裏側まで洗えるのか、ずれたときに製品が挟まらないか、そこまで考えると単純に隙間を埋めるだけでは済みません。

搬送の改善は、能力や速度だけで決まるものではありません。作業者がどちらの手で製品を取るのか、清掃用のホースをどこから引くのか、通路を何人が通るのか。図面には小さくしか描かれない寸法が、毎日の動きを変えてしまいます。

既製品を残して必要な部分だけ変える方法もある

検討の結果、この工場では既存コンベヤの本体を残し、出口側に短い待機部分とストッパーを追加しました。ストッパーというのは、製品を決めた位置でいったん止める簡単な機構です。

検品者がトレーを取ると、センサーがそれを確認し、次の一枚が送られます。後続品が次々に押してこなくなったことで、表示を確認する時間に余裕が出ました。作業者が片手でトレーを押し戻す動きもなくなり、出口付近に製品が斜めにたまる回数も減っています。

変えたのは、搬送ライン全体ではありません。コンベヤの出口形状、センサーの位置、製品を止めるタイミング、検品台との高さです。とはいえ、機械部分を付け足せば終わる改造でもありませんでした。既存の制御盤から信号を取れるか、停止中に後ろの製品が詰まらないか、清掃時にストッパーを退避できるかも確認しています。

オーダーメイドというと、一台の機械をまるごと新しく作る話に聞こえるかもしれません。ですが実際には、既製品を活かしながら足りない部分だけ合わせる改造も、その一形態です。使える部分を残せば費用を抑えられる場合があります。一方で、古い部品や入手しにくい制御機器まで抱え続けることになる場合もあり、残すことが常に得とは言い切れません。

改造を重ねるうちに更新が自然な候補になることもある

設備を見ていると、「ここを直せば使える」という箇所が一つでは済まないことも少なくありません。出口だけを見るつもりが、ベルトの傷みや脚の腐食も目に入ってきます。カバーも外しづらくなっていて、モーターも古く、交換部品の納期が読めない。こうなってくると、改造と更新の境界は次第に曖昧になっていきます。

先ほどのコンベヤも、出口側だけの改造なら既存設備を活かせました。ですが、フレーム内部に洗浄水が残る、ベルト交換に時間がかかる、数年後には制御機器の入手が難しくなりそうだ、といった事情が重なると、入れ替えも同じ検討の延長線上に浮かんできます。

更新は、オーダーメイドをあきらめて既製品に戻すという話ではありません。今の作業方法や洗浄手順に合わせて既製機を選び直すこともあれば、必要な箇所だけ仕様を変えた搬送機を新しく入れることもあります。

修理費だけを比べると改造のほうが小さく見えても、停止時間や部品供給、清掃の手間まで含めると見え方は変わってきます。反対に、数年後に工程が変わると決まっているなら、大きく更新せず改造でつなぐ考え方もあります。設備を残すか入れ替えるかで迷ったときは、改造と更新の考え方を扱った記事はこちらが手がかりになるかもしれません。

小さな改造の先に自動化が見えてくることもある

食品機械

搬送改善の相談は、最初から「工程を自動化したい」という言葉で始まるとは限りません。「人が付ききりになる時間を減らせないか」という話のほうが、むしろ自然です。

たとえば、袋詰め後の製品を箱詰め位置まで運ぶシュートの角度を変え、製品が重ならないようにガイドを追加する。最初はそれだけの改造でも、流れが安定してくると、次は一定数ごとに製品を分けたいという話が出てきます。その先に、センサーで数を確認する、箱が来たときだけ製品を送る、といった小さな自動化が見えてくるのです。

ただ、人の作業を機械に置き換えれば、そのまま楽になるとは限りません。人は曲がった袋を無意識に直し、厚みの違う製品を見分け、箱が少しずれていれば手で寄せています。自動化するなら、これまで人が吸収してきたばらつきを、どこで受け止めるのか考えなければなりません。

全面的な無人化まで進めず、搬送だけを安定させる、数量確認だけ機械に任せる、という選び方もあります。どこまで任せるか迷うときは、小改造から考える自動化の記事はこちらのように、作業を細かく見ながら検討したほうが実情に合うことも多くあります。

同じ改造でも現物を見たかどうかで結果が変わる

別の現場では、検品ラインではなく袋詰め機の出口で、同じくストッパーを追加する相談を受けました。同じ「止める」という改造でも、関わり方によって結果が変わってしまう場面がありました。

このときは、支給された図面だけをもとに、袋のシール部を挟まない位置にストッパーを取り付ける案が進んでいました。図面上では製品が中央を流れています。ところが現場で実際に運転してみると、袋のシール部分がガイドへ触れ、製品は出口に近づくほど片側へ寄っていました。

「普段から、ここだけ少し斜めになるんです」

作業者のその一言で、ストッパーの位置を中央からずらし、ガイドの開き方も変えることになりました。現物を確認せず図面どおりに製作していたら、停止自体はできても、袋を斜めに挟んでしまう可能性がありました。改造の内容そのものは同じでも、現場での採寸や現物確認があったかどうかで、選ぶ形が変わった場面です。

設計した人と、後で修理する人が別々の場合には、もうひとつ別のすれ違いも起きます。修理担当者が「なぜセンサーをこの位置にしたのか」を知らなければ、故障対応のときに標準的な位置へ戻してしまい、以前の詰まりを再発させることがあります。修理としては間違っていなくても、改造時に解決したかった問題が引き継がれていないのです。

反対に、設計から製作、制御、据付、修理、改造、保守まで同じ会社の中で継続して見ている体制なら、変更した理由を追いやすくなる傾向があります。とはいえ、一社に任せれば何でも解決するわけではありません。対応できる範囲や連絡の取り方、既存設備の情報をどこまで共有できるかは、事前に確かめておきたいところです。設計後も一貫して関わる体制の記事はこちらでは、この違いをもう少し詳しく扱っています。

作るかどうかを急がず誰と進めるかを考えてみる

搬送設備の違和感は、機械そのものの問題だけでは説明がつかないことも少なくありません。製品の形、前後工程の速度、作業者の動き、洗浄方法、通路の広さ、そうしたものが重なり合って、既製品の標準仕様との小さなズレになっていきます。

そのズレは、短いガイドを一つ足すだけで収まることもあれば、既存コンベヤを活かした改造がちょうど合うこともあります。負担まで見ていくと、いっそ更新したほうが話が早いというケースもありますし、人が吸収してきた作業を見直した結果、小さな自動化に進むこともあります。どれが合うかは、現場を見てみないと判断しにくい相談も少なくありません。

こうした相談では、設計時の意図を後の修理まで残せるかどうかも関わってきます。有限会社イオキテックは、愛媛県を拠点にしながら、四国を中心に全国の食品工場から、既製品では合わせにくい機械や搬送設備の相談を受けてきました。製造ライン全体を一括で請け負う意味ではなく、設計から製作、制御、据付、修理、改造、保守まで、現場で設備を使い続けることを前提に関わっています。

まだ要望を仕様書にできていなくても、「この位置で製品が重なる」「ここだけ人が付ききりになる」といった話から、実機を見ながら考えていける場合があります。結論を急ぐためではなく、今の設備に何が起きているのかを確かめるために、設備の状態について相談するという進め方もあります。

最後に残るのは、改造するか更新するかという二択だけではありません。自社の搬送改善について、誰に現場を見てもらい、どこまで関わってもらうのか。改造か更新かを決める前に、まずは「誰とどう進めるか」から考えてみる余地がありそうです。

 

RECOMMEND